「栗は、愛情をかけるほどいい実がつきます。今年は実が小さかったな、来年はどうしよう、と悩みながら一本一本を育てる中で、私たちも成長します。だから栗栽培は〝木育て(こそだて)〞なんですよ」と話す栗っこ会代表の山本浩子さん。「今年もありがとう」「来年もいい実をつけてね」と声をかけながら栗を拾うという。

 

 栗っこ会は、栗栽培の勉強をする女性たちが2017年に立ち上げた。「父が亡くなった後、大事に育てていた栗園が荒れてくる様子をみて、自分で何かできないかと考えたのがきっかけでした。」と山本さん。栗栽培について一から学び、女性初となる「栗剪定士」の資格を取得した。「力仕事ってイメージしがちですが、女性でも栽培できるんですよ」。現在のメンバーは23名。親が遺した栗林を再生したい人、子育てしながら家の栗を手入れしたい人など、さまざまな女性が楽しみながら活動している。
最近では、丹波栗の魅力を広めるべく、オリジナルレシピの考案や、イベントへの出店など積極的にPR活動を行っている。

 丹波栗は、寒暖差が大きく霧深い丹波市で育つからこそ甘みが強く粒が大きい。この地域では栗の木が家の庭先にあることも珍しくないが、後継者がおらず、手をかけられず放置されたり、切られたりすることも多いという。「栗は未来の宝物。植えれば10年後にはたくさん収穫できます。一本の栗の木を大事にして、もう一度育ててほしいです」。 目指すは、〝栗の里丹波〞。一時は、栗の生産が衰退しつつあった丹波だが、今、また盛り返しつつある。その勢いを、栗っこ会の女性たちがあたたかく、力強く盛り上げている。

 



 

 

 

▲ 栗っこ会では、収穫後の栗をマイナス2度で40日間、低温熟成している。糖度が10%上がり、甘みと旨味が引き出されるという。

 

 

▲ 「 栗のおいしさを知ってほしい」と、栗のポタージュや栗スティックなど、さまざまなメニューを考案して栗の食べ方をPR。女性ばかりなので、気兼ねなく意見を言い合える。SNSで情報交換をしたり一緒に商品開発をしたり、栗の話題は絶えない。

 

 

▲ 高く育ちすぎたり虫に侵されたりした栗の木も、改良すれば、また美味しい実をつけるようだ。

 

 

▲【右】農業をするために2017年に東京から移住してきた金丸さん。栗っこ会に参加し、一から栗を育てている。「丹波市で育つ栗が一番おいしい。この栗を日本中に広めたいです」。

 

▲【左】亡くなったお父さんが大事にしていた栗園を、その思いとともに引き継いだ酒井さん。「草刈りなど大変な作業もありますが、仲間がいるから楽しいです」。

 

 

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