「僕は料理人じゃなくて、歴史家なんですよ」
レストランに取材に来たはずなのに、開口一番の自己紹介が、まさかの「歴史家」。
インパクトのある自己紹介をしていただいたのはテッラドーノの店主、羽生裕行(はにゅうひろゆき)さん。
今回ご紹介するのは、丹波市市島町にあるイタリアンレストラン「テッラドーノ」です。
初めて来店した方は驚かれると思います。
レストランの看板は出ているものの、どこからどう見ても保育園。
園庭にはかわいらしい遊具、建物には果物の名前を使った教室の目印が飾られており、今にも子どもたちの声が聞こえてくるよう。
それもそのはず、テッラドーノは、元保育園の施設を活用したイタリアンレストランなのです。
「内装は、保育園だったときのまま、ほとんど変えていません」
通された店内は天井が高く、広々とゆとりを感じる空間となっていました。
改装したのは店内の奥に設置されたステージと、カウンターだけとのこと。
赤・白・緑のイタリア国旗を思わせるカーテンから柔らかな昼の光が透けていて、思わずお昼寝をしたくなるようなやさしい空気に包まれていました。
店名はイタリア語の「テッラ」(土地)、「ドーノ」(贈り物)からきており、「テッラドーノ」は“大地の恵み”を意味します。羽生さんの大学時代の師匠が名付けられたそうです。
羽生さんは、大学時代は歴史学を専攻されていたそうです。
歴史学からなぜ料理人にと不思議に思っていると、
「料理は、歴史なんですよ。料理にはその土地、地域、歴史、いろんなものが詰まっている。たとえばジェノベーゼペーストにじゃがいもを合わせる料理がありますが、これはジェノバ出身のコロンブスが新大陸でじゃがいもに出会ったという歴史がある料理なんです。そういうものがすべての料理にあるわけなんです。それが好きでやっているだけで、僕は自分のことを特別料理人とは思っていないんですよ」とのことです。
羽生さんのご出身は港町神戸。
お母様の勧めで調理士免許を取得後、神戸のインド料理店を経て大阪のイタリア料理店に長く勤められました。
転機があったのは丹波のキャンプ場で料理人として働いていた頃。縁あって今の店舗となる保育園施設を紹介され、今から10年前の2015年3月、テッラドーノを開店されました。
開店までの1年間は、納得のいく食材を探し求めて丹波の生産者さんのもとを訪れ、関係を築いてきたとのこと。仔牛肉、豚肉、鶏卵、牛乳、野菜、小麦粉、水、ピッツァ釜に使う薪に至るまで、丹波産の食材や素材が使われています。
地元の食材を使った“地産地消”は、テッラドーノの大切なコンセプトの1つとなっています。
「ピッツァは生地が9割」と語る羽生さん。テッラドーノで提供されるピッツァは、丹波産とイタリア産の小麦、丹波の水、沖縄の海の塩、イースト菌でできています。
ピッツァは体にたとえると、生地が体、具材は髪型のようなもので、その時の季節や気分で食べたい具材を選んで楽しんでほしいとおっしゃっていました。
お店の一番人気はマルゲリータ。こだわりの生地の上に、トマトソース、バジル、チーズがのった、王道ピッツァです。
生地を一口噛みしめると、生地が9割の意味がわかります。
窯で焼きあげられたピッツァは、生地が薄焼きながらモチモチしていて、トマトの酸味とバジルの風味、まろやかなチーズをまとめて頬張ると、大地の滋養を頂いているようなおいしいさ。また、トマトソースがかかっていないピッツァのミミ部分はカリッとしていて、食感の違いもさることながら、小麦の風味をダイレクトに感じることができました。
店名にもある「大地の恵み」を思い起こさせるテッラドーノのピッツァを、ぜひ多くの方にご賞味いただきたいです。
続いては、パスタをご紹介します。
お店で断トツ人気なのは「鶏肉と丹波野菜のレモンバターソース」だそうですが、今回は、テッラドーノでしか味わえない「丹波産仔牛ときのこのトマトソースショートパスタ カサレッチェ」をいただきました。
カサレッチェとは、断面がS字になっているショートパスタのことです。
カサレッチェは、もちもち食感で、トマトソースがよく絡みます。
仔牛は、こりこりとした食感が特徴の旨味の強い首のお肉が入っており、噛めば噛むほどしっかりとした旨味を感じることができました。なお、お肉の部位は日ごとに変わるそうなので、もしかすると次に来店した時には、違った味わいを楽しむことができるかもしれません。
羽生さんは、仔牛をできるだけ無駄のないように、ご自身で加工して調理されているそうで、食材への感謝を感じながら、調理に向き合われている姿勢は、やっぱり料理人だと感じました。
ここで紹介したピッツァやパスタは、ランチセット(お好きなピッツァまたはパスタと、サラダ、ジェラート付き)でお楽しみいただけます。
そして、ランチセットについてくるジェラートは、なんと自家製。
お店の入口正面には、大きなジェラートのショーケースがあり、ミルク、チョコレート、ピスタチオ、いちご、ブルーベリー、丹波栗の6種類をお楽しみいただけます。
見た目はとてもシンプルなジェラートですが、こんなにも素材そのものの味がするジェラートは初めてで、感動しきり。
シンプル・イズ・ベストの言葉がこれほど当てはまるジェラートはありません。
私の一押しは「ミルク」。ひかみ牛乳の濃厚さが際立っていました。
いちごは、丹波篠山たぶち農場のいちごを使用し、フレッシュでさっぱりした甘さ。
ブルーベリーは、氷上産ブルーベリー(藤原ベリー)を使用し、酸味が少なく後味がすっきりした甘さになっています。
深いコクのあるチョコレートと、爽やかなナッツの香りのピスタチオはイタリア産のものを使っています。
どこか懐かしくほっこりとした気持ちになれる丹波栗は、手作業で仕込みを行っており、栗そのものの風味が口の中にいっぱい広がります。
ジェラートは時期によって、期間限定の味が販売されます。
2025年8月時点では、まもなく「シャインマスカットジェラート」(8月下旬~9月頃)が提供されるとのことです。
テッラドーノへ訪れた際には、是非「今しか味わえない」味をご賞味ください!
ただし、ジェラートは、ランチセット以外ではテイクアウトのみの販売となりますのでご注意ください。
羽生さんの料理へのこだわりは、「イタリア料理の基本は外さずに、丹波の素材を取り入れている」こと。
その思いは、丹波産の素材をふんだんに取り入れた料理やジェラートに表れています。
そもそも元保育園という極めて稀な立地にイタリアンレストランを開店した羽生さんの想像力は、既成の枠に収まりません。
店内をふと見ると、そこには「おとまりれすとらん」の看板が。
そう、テッラドーノは、なんと宿泊できちゃうのです!
宿泊を始めたのは、知人のサッカークラブの方から、ここに宿泊できないかと相談を受けたことがきっかけでした。
今では、少年野球チームや空手部の合宿などに利用されているそうです。合宿の食事が「おいしいイタリアン」だなんて、ちょっと羨ましいです。
スポーツクラブ以外では、親しい家族同士での親子お泊り会や、親戚の集まりなどで利用されています。子ども連れでのママ友同士のお泊り会にもよさそうです。
テッラドーノは、元保育園の施設をそのまま活かした造りになっているので、キッズスペースも完備。キッズスペースには、おもちゃや絵本、柔らかい素材の積み木などが置いてあります。
「子どもを騒がしいと感じる方もいるかもしれません。でも、ここは元保育園。子どもがのびのびしていい場所なんです」
小さな子ども連れの親御さんにとって、この上なく心強い言葉を羽生さんからいただきました。
テッラドーノには園庭も整備されているので、じっと座っているのに飽きてしまった子どもは、園庭に出て遊んでも、虫を追いかけてもよいのです。
店内から園庭はよく見えるので、親御さんも子どもを安心して遊ばせることができます。
また、お手洗いも広いので、おむつ替えスペースの心配もありません。
「今は少子化の時代です。こんな時代だからこそ、子どもたちの味覚の記憶に残るようなおいしいものが大切だと思います。将来、丹波のおいしいものを次の世代につなげる人になってくれるかもしれない。そう思って、僕は“おいしい”の種を蒔き続けています」
その一環として、丹波市内の保育園の園児を対象に、自家製ジェラートを無料でプレゼントする試みも行われています。
羽生さんのお話はレストランの枠を超え、人・土地・世代へと広がり、「料理は歴史なんです」と最初におっしゃった意味がなんとなく分かるような気がしました。
おいしい料理を楽しむのはもちろん、大切なお話をたくさん伺うことができました。
合わせて、今後お店に来られる方には、「丹波の地で味わえるイタリアンをお召し上がりください」とのことで、その思いは、“大地の恵み”を体現したお料理にすべて表れているように感じました。
元保育園の施設と歴史家の料理人(料理人の歴史家?)が“大地の恵み”で迎えてくれる。そんな丹波のやさしいイタリアンを味わいたい人は、是非、テッラドーノに訪れてみてください。
あなたの料理の歴史に新たな1ページが加わるかもしれません。
【イタリアンレストラン テッラドーノ】
住所:丹波市市島酒梨156-2
電話:0795-85-4755
営業時間:ランチタイム11:30~15:00(最終入店13:50、L.O. 14:00)、ディナータイム(要予約)18:00~21:30(L.O. 20:30)
定休日:水曜日
席数:40席
駐車場:有(25台)
Facebook:Terradono大地の恵 テッラドーノ | Facebook
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- 投稿者
- まる
- 年代
- 1980年代
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