お正月の鏡餅、赤ちゃんの一升餅のお祝い、節分や桃の節句などの年中行事の振る舞い餅に、人生の節目のお祝いの席にはお赤飯。

 

奈良時代の書物「風土記」に記されているほど、古くから日本で愛されてきた「お餅」。

日本では遥か昔から、ハレの日にはお餅やお赤飯が食べられてきました。

 

今回ご紹介するのは、2024年11月にオープンした日本の伝統食「お餅」にこだわる「餅の神田屋」さんです。

 

 

 

JR柏原駅から徒歩5分、兵庫県の天然記念物に指定されている樹齢千年とも推定される大ケヤキ「木の根橋」のほとりに、餅の神田屋はあります。

 

 

 

お店に入ると、もち米を蒸している香りや和菓子のやさしい甘さが、ふんわりと漂っており、どこか懐かしく、心が落ち着きます。

 

ガラスのショーケースには、お餅やおはぎ、大福にお赤飯が、整然と美しく並んでいます。

やさしい色合いの商品たちは、丁寧に1つ1つ手作りされた実直さが見てとれます。

店内に広がるほのかな甘い香りが、ケースに並ぶ和菓子のやさしい甘さを感じさせ、おいしそうで目移りしてしまいます。

 

 

餅の神田屋自慢の商品を、いくつかご紹介します。

 

 

【つきたて餅】

 

 

 

神田屋の名物の「つきたて餅」(5個入り・400円[税込])は、つきたての柔らかいお餅を味わってもらいたいとの思いから、毎朝4時からお米を蒸して、餅をついています。

 

お店で使用しているもち米は“ひよく米”という品種で、炊いても固くならず、キメが細かく、粘りと甘みが特徴のもち米です。

このため、時間が経ってもモチモチ感が続き、上品な甘みがあります。

 

また、蒸したもち米を程よい柔らかさのお餅に仕上げるため、餅をつく時間は、その日の気温や湿度によって調整しています。

シンプルだからこそ、職人の技術が光るお餅になっています。

 

つきたて餅は、特別な蜜にくぐらせた後にたっぷりのきな粉をまぶしてあり、まろやかな味わいと、ほどよい甘さが毎日でも食べたい癖になるおいしさです。

 

 

【おはぎ】

 

 

 

餅の神田屋のもうひとつの名物は、和菓子の定番おはぎ(100円[税込]~)です。

 

 つぶあん、こしあん、きなこ、赤飯など、たくさんの種類のおはぎがあります。

 

ひとつひとつ丁寧に手作りされたおはぎは、やさしい甘さで口当たりがよく、いくつでも食べられそうです。

きなこおはぎ、赤飯おはぎともに、中にはあんこがたっぷり入っているのが嬉しいところ。

 

こしあんとつぶあんのおはぎが3つずつ、6つ入りのセットになっていますが、午前中はバラ売りもしています。

 

特別な日でなくてもいつでも食べたくなる、そんなやさしいおはぎです。

 

 

【大福】

 

 

 

色々な和菓子がありますが、常に人気が高いのが大福です。

 

神田屋の商品の中でも一番人気は、やはり「丹波黒豆大福」(260円[税込])。

 

丹波産の黒豆を使用しており、観光客にも地元の人にも好評です。

柔らかなお餅の中に、3日かけてふっくら煮た希少な大粒の丹波の黒豆と、程よい甘さのあんこがぎっしり入っており、一口頬張ればそれぞれの甘さが口の中に広がります。

黒豆の味わいもしっかり残っているので、特に黒豆好きな方にはたまらない一品となっています。

 

9月からは、ごま大福も販売しており、今年の秋は、栗の大福や鳴門金時の大福の販売も予定していますので、是非、色々な大福を味わってみてください。

 

 

【わらび餅】

 

 

 

絶妙な柔らかさのわらび餅のつるんとした食感と、きな粉の香ばしさが感じられるわらび餅です。

 

きな粉には、きめの細かい京挽きな粉を使用しているので、口当たりがとても滑らかです。

 

また、神田屋のわらび餅は季節によって変わり、2025年10月現在では、秋を感じさせる「栗入りわらび餅」(450円[税込])を販売されています。

 

丹波市が日本一熱い(暑い)街となった今年(2025年)の夏は「生クリームをのせた珈琲わらび餅」が販売されていて、大人気だったそうです。

 

季節によって、他には見られない個性的なわらび餅に出会えるのも嬉しいですね。

 

 

【餅屋の小餅とお赤飯】

 

 

 

餅屋の原点である「餅屋の小餅」(1つ80円[税込]・3つからの注文)は、お餅が好きな方に、ぜひ味わってほしい逸品です。

 

神田屋の小餅は、しっかりとした弾力と粘りがあり、もち米の風味が豊かな小餅です。

焼いてよし、煮てもよし、お好みの味付けで召し上がっていただきたいです。

シンプルだからこそ、餅の本来の味わいが楽しめ、飽きのこない一品です。

 

他にも、丹波のもち米を使用したお赤飯は、ご主人の自信作とのこと。お祝い事にはもちろん、普段の日にも、ぜひ一度ご賞味ください。

 

 

【季節限定の和菓子】

 

 

季節ごとに色々な味を楽しんでもらいたいとの思いから、季節限定の和菓子も用意されています。

 

春頃には「いちご大福」、「桜餅」、「柏餅」など、またこの時期には欠かせない「お月見団子」(480円[税込]/販売期間は10月中旬頃までの予定)を販売しています。

 

これから訪れる季節にはどんな和菓子が食べられるのか、今から楽しみです。

 

餅の神田屋の和菓子は、基本的に甘さは控えめとなっていますので、お餅そのものの甘さや、素材そのものの風味を十分お楽しみいただけます。

ついつい手が伸びて食べ過ぎてしまいそうになるので、そこだけは注意してくださいね!

 

 

さて、これらのご紹介したお餅と和菓子はいずれも日本の伝統的な和菓子であり、老練さすら感じるものではありますが、このお店を営んでいるのは、実はフレッシュなご夫婦なのです。

 

ご主人の米崎裕彦(よねざきひろひこ)さんと、奥様の瑠里子(るりこ)さんのお二人に、お話を伺いました。

 

店名の「餅の神田屋」。

「神田」は裕彦さんの旧姓で、「神」と「田」が両方入っているのはお餅屋さんの店名にぴったりだと思って決められたのだそうです。

確かに、お餅はお正月に食べたり、お祝い事で配られたりと、神事と深いつながりがあります。また、お餅の材料のもち米を作るためには、田んぼが必要不可欠です。「神」と「田」は、お餅づくりには欠かせないものなのですね。

 

米崎さんご夫妻は、もともと神戸にお住まいでしたが、丹波へ移住して「餅の神田屋」を開店しました。

 

和菓子屋の開店に向けて地域を決めずに物件を探している時に、この柏原の地に特別な風情を感じたそうです。

 

「和菓子屋の店舗として、小綺麗なところよりも風情のある場所を探していました。ここの近くには柏原八幡宮もあって、雰囲気がすごく良かったんです。それまで色々な場所を探しましたが、この物件に出会って、ここ丹波で和菓子屋を開くことに決めました」

 

若くしてお餅屋というのが、また渋いですね。

少し偏見があるかもしれませんが、そんな感想を投げかけると、裕彦さん曰く、

「和菓子屋というジャンルの中でも、確かに餅屋は少ないです。でも、自分は餅屋でいきたいと思っていました。百貨店で購入するような進物用のお菓子屋さんが多い中で、その日ついた餅をその日に召し上がっていただくという、お客様との距離が近い地域の和菓子店。お土産としてももちろんいいのですが、自分用のお菓子にしてもらえるのが、うちのお菓子かなと思っているので、餅菓子のお店にしました」

 

出来たてを食べていただきたいという思いがあるので、商品はすべて当日製造・当日販売。

売り切れ次第終了となります。

 

また、普段のおやつとして日常使いしてもらえるよう、手頃な価格設定にしています。

 

 

 

また、元パティシエの瑠里子さんに、和洋折衷のお菓子の展開について伺うと、

「洋風テイストを和菓子に入れるのなら、基本は和菓子が主軸で、美味しさ重視で自然に取り入れるような商品にしたいです。和菓子にあまり興味のない方にも、うちの和菓子が届いてほしいと思っています」

 

常に新しいことに挑戦するご夫婦の試行錯誤の日々はこれからも続きます。

 

「遠くから来て、この土地でお店を開くことに、正直不安もありました。そんな中、やさしく受け入れてくださった地域の方々には、本当に感謝しかありません」

と、お話くださったのは瑠里子さん。

 

「地域の方に、『楽しみにしてるよ』、『がんばれ』と、あたかかい声をかけてもらえたことが、本当に嬉しかったです」

 

そんな餅の神田屋は、今では常連のお客さんも多く、地域に愛される和菓子屋さんになっています。

新商品をインスタグラムに投稿すると、次の日には「インスタを見て」と買いに来てくれる方もいらっしゃいます。

 

「神田屋さんの和菓子、おいしいから、お友達にも食べさせたくて」

丹波の土地柄なのか、手土産で何個も購入される方もいらっしゃるとか。

 

また、和菓子好きなのはご年配の方だけではないようです。わらびもちが大好きな地元の小学生も、お店の常連なのだそう。

「和菓子が好きな子どもさんも来てくれて、とても嬉しいです」

と、笑顔の瑠里子さんでした。

 

 

開店時に小さなお客様からもらったお手紙を大切に飾ってありました。

 

「地域のお客様には普段使いできるおやつとして、観光のお客様には『来てよかったなぁ』と思ってもらえるような、そんな和菓子を作っていきたいです」

 

大ケヤキに見守られながら、また、丹波の人たちに感謝しながら、神田屋さんは、今日もペッタンペッタンと美味しいお餅をついています。その実直な姿は、大ケヤキに負けじと、丹波の地に着実に根を広げる大樹になる予感がします。

 

皆さんも、餅の神田屋さんに、ほっこり優しい味に会いに行ってみませんか。

 

 

 

【餅の神田屋】

住所:丹波市柏原町柏原5-2

営業時間:9:00~17:00(完売次第閉店となります。インスタグラムのストーリーにアップしているのでご確認ください)

定休日:月・火(祝日は営業)※毎月の営業日はインスタグラムにてご確認ください

駐車場:無

Instagram:@mochino_kandaya

私がレポート

稿
まる
1980年代
自然や食べることが好きで、私が気になった"丹波市"を発信中です。
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