麹と聞くと、塩麹を鶏肉につけるとお肉が柔らかくなって美味しくしてくれる調味料のイメージがありましたが、丹波に麹の魅力を最大限に引き出す方がいらっしゃるということで、お話を伺うことが出来ました。

今回お話をお伺いしたのは「おかしなこうじや」の代表、本間速さん。
本間さんは2021年6月に開業され、8月から始動されたばかりで、常設店ではなく、ネット販売や出店イベントで販売する麹を作られています。



▼この日のインタビューの為に色々準備してきてくださいました。

 
甘さに驚く麹スカッシュ

まず、丹波市内でのイベント出店で提供されている麹スカッシュを飲ませていただきました。
黒い麹は珍しいと思ったのですが、お話を伺うと泡盛でも使われている黒麹菌を使われているため、このような色になるそうです。黒麹菌はクエン酸を自ら作るために酸味があるそうで、実際に黒麹スカッシュを飲んでみると確かに甘酸っぱいのですが、それが炭酸と相まって後引く美味しさでした。夏の暑い日にスッキリ飲める感じです。

対して麹スカッシュは、甘酒を炭酸で割って飲むとイメージしていただければ良いと思うのですが、この米麹の甘さに驚きでした。これは本間さんが作る麹だからこそ出せる味で、炭酸で割ることを考え、その甘い米麴で、糖度を40度まで上げて甘酒を作っているそうです。

また、甘酒と聞くとお正月に飲むものを連想しますが、あちらの甘酒は主に酒粕からつくられた甘酒なので、アルコールや癖を感じて苦手な方もいらっしゃるのではないでしょうか。この麹の甘酒は米麹なので、ノンアルコール。お子さんでも飲めますし、飲むお米といった感じで、腹持ちもある感じがしました。

▼お店のロゴは麹菌をイメージしたデザインで、版画なんだそうです


このほかにも、出店イベントでは珈琲を甘酒で割る「麹ラテ」もあるそうです。さらにこれから冬のイベントの際は麹を使ったスープも計画中とのことで、出店イベントが待ち遠しくなりました。出店イベントの情報はInstagramに掲載されるそうなので、味わってみたい方は、是非そちらを確認してください。

▼「麹ラテ」美味しそうです


そのまま食べても美味しいお菓子な米麹

 
先ほど賞味した麹スカッシュは、もともと本間さんが作られた米麹から作られるのですが、こちらの米麹もそのまま食べられるということで、賞味してみました。

▼冷凍保存で長く保管できるそうです

 

こちらが黒麹。ドリンク同様、このまま食べてもやはり酸味を感じました。ただ、甘さもあるので、筆者はこちらの味が好きでした。写真を見ていただくと、黒麹は一瞬カビの様に見える方もいらっしゃると思います。筆者も気になったので、麹菌とカビの違いを伺ったところ、野生のカビと麹菌は見た目こそ区別は付かないものの、一番の違いは毒を作るか作らないかで、きちんとした麹菌は毒素を作らない特徴があるんだそうです。だからこそ、本間さんが作ったこの黒麹は安心して食せるものになっています。

 

 

こちらは普通の米麹。先に黒麹を食べたせいもあるかもしれませんが、これが麹が作る甘さなのかと驚きます。そして、黒麹もそうだったのですが、ふわふわもっちりな触感に驚きます。筆者の米麹のイメージは口にするまで、生米の様なイメージだったのですが、全く違いました。このふわふわもっちりな食感は、本間さんがお菓子の様に麹を食べてほしいという想いから何度も開発を重ねた賜物です。

 

 


また、今回仕込みたての麹も準備していただいたのですが、これは本当に生米に近く、粒も固いですし、甘さもありませんでした。なので、本間さんが作る米麹がいかに美味しくお菓子の様に食べられるものに仕上げられているかがよくわかりました。

 

麹菌は元々ある材料の糖分を消費し、麹自体も甘くありませんが、菌がお米を分解することにより甘みが作られるのだそうです。本間さんは麹が甘いと面白く、多くの人に興味を持ってもらいやすいと考え、そのままお菓子のように食べられる麹を作りたいという思いから、甘みがでる米麴になるように工夫して作られているそうです。


▼仕込みたて(左)と完成した麹(中央)を並べると色合いが違うのもよくわかります



食品を発酵させる微生物に興味


高校時代から食品を発酵させる微生物に興味があった本間さん。食品に関わる発酵のものづくりに携わりたい思いから丹波の酒蔵に勤めていました。そこでさらに、日本酒の発酵の面白さに魅了され、在職中も独学で麹について学んでいたそうです。その後、酒蔵を退職。趣味で作っていた自らが作る麹を、美味しいと求めてくれる人がいるならと「おかしなこうじや」をはじめました。

▼本間さん


麹につかうお米は、農家さんから直接購入したもの。麹菌は専門の会社より購入しています。
家庭で麹を作る際のコツをお伺いしたところ、水分量が大切だそうで、失敗する人は米を炊いているのだそう。米を炊くと水分が増え、麹菌が増える前に雑菌が増えるので、お米は蒸すのだそうです。

 
妙な食材でも麹づくり


「おかしなこうじや」の屋号には、麹を「お菓子」の様に食べて貰いたいという思いと、妙な、普通ではないという意味の「おかしな」を含んでいます。その「おかしな」を指すのが、麹にする材料にあります。本間さんはこれまでに、珈琲豆、香辛料、ハーブ、切り干し大根と様々な食材で麹作りを試してきたそうです。先ほどあげた食材は美味しく麹にすることが出来なかったそうですが、一方で蕎麦の実やもち麦から美味しい麹を作ることに成功したそうです。

 

 
生活に麹を取り入れることで豊かな生活に


醤油・酒・酢・味噌といった日本の発酵調味料に欠かせない麹。
調味料は日本人の生活に当たり前のように浸透している反面、麹自体は馴染みが無くなってきているところに本間さんはもどかしさを感じていました。もっと、麹の面白さ・楽しさを知ってほしいと、そのまま食べても美味しいお菓子のような麹を開発し、麹を身近に感じてもらうために動き出しました。
今まで麹を使ったことがない人が、麹に興味を持ち、味噌や醤油を手作りするといった、生活に麹を取り込むことで豊かな生活作りの担い手になれたらと語ります。

 

 

いつかは農家の顔が見える麹屋に。お酒も作りたい。


今年動き始めたばかりの「おかしなこうじや」ですが、すでに大きな未来予想図がありました。
ひとつは、丹波にはいい農作物を育てる農家さんがたくさんあるので、農家ごとに麹を作り、農家さんの顔が見える麹屋になりたいということ。そしてもうひとつは、麹屋が順調になったら、手がけた麹でオリジナルのお酒をつくりたいということです。どちらも、実現されそうな気がしました。

コロナ禍で家で過ごす時間が増えた昨今、手作り味噌が少し流行っていますし、麹は発酵食品の類なので、これから多くの女性に注目されるお店になること間違いなしだと確信しました。何より本間さんからお話を伺っている間、常に微生物や菌に対して揺るぎない愛と熱意を感じました。その情熱から作られる麹が、多くの人の食卓を彩る日も遠くないと思います。お菓子のような麹が丹波名物のひとつになる日を楽しみにしています。


※インタビュー時以外の写真は「おかしなこうじや」様よりご提供いただきました。

 

  

おかしなこうじや

名称 「おかしなこうじや」
所在地:兵庫県丹波市市島町上竹田272
HP:https://okashinakojiya.com/
Instagram:https://www.instagram.com/okashi_na_koji_ya/

私がレポート

稿
MATY
1980年代
自ら取材やレポートを行い、一次情報の記事を大事にしているフリーランスのライター。高校時代から趣味でホームページを開設。発信で世界と繋がる魅力にハマり、以降も趣味が出来るごとにブログを綴る。動物看護士、大手通販会社勤務、全国の百貨店を飛び回る催事販売員を経て2019年独立。趣味は社会人サッカーリーグの魅力を発信すること。ドリカムを崇拝しているアラフォー。
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