山と川、豊かな自然に囲まれた丹波市市島町。西山酒造場は、1849(嘉永2)年の創業以来、清流竹田川の伏流水を使用し酒造りを続けてきました。「酒蔵」には男性の世界というイメージがあるかもしれませんが、西山酒造場では女性蔵人も活躍。酒造りや商品にも、女性ならではの視点が取り入れられています。看板商品である「 小鼓 こつづみ 」は、フルーティー・フレッシュな呑み口で親しみやすく、また 綿貫宏介 わたぬきひろすけ 氏がデザインしたラベルも相まって若い方や女性にも気軽に手に取れるものになっています。

 

西山酒造場

 

常に酒造の世界に独自の視点を取り入れながら、製法・神事を始めとする創業当時からの伝統を守り続けてきた西山酒造場。この夏、その伝統を肌で感じ、受け継ぐ一員となれるような酒・発酵・芸術の複合施設「鼓傅」を2024年8月8日にオープン。SATURDAY TAMBA編集部もこの度、施設内をご案内いただきました。

 

 木造の歴史ある酒蔵を、子どもから大人まで発酵文化を楽しむ場所に

 

鼓傳入口

 

鼓傅は、1896年に建築された酒造場敷地内にある木造建築の酒蔵をリノベーションしています。1991年に現在の酒蔵が建てられてからは酒造りの役割を終えていましたが、ここに今、新しい命が吹き込まれました。

 

 

 

ワークショップ会場

 

一歩足を踏み入れると、そこは昔、蔵人が酒造りをしていた風情。新しいものは必要最小限にとどめ、元からあった古道具を生かした空間になっています。

 

発酵まかないカフェと発酵おやつショップで体も心も満たされて

 

 

まるで木製の酒樽が並んでいるかのようなこの空間は、飲食のできる発酵まかないカフェ「 小鼓 こつづみ 御里 おんり 」。反対側から見ると、酒樽をそのまま生かしたテーブルと椅子が現れます。

 

 

樽を活かした座席

 

木樽で囲われた空間は程よいプライベート感。気のおけない友人とのおしゃべりを楽しみながら、お昼ごはんをいただくのにぴったりです。

 

こちらでいただけるのは、蔵人たちのまかない食をベースにした発酵食。麹菌という生き物を相手に泊まり込みで取り組む酒造りは、重労働で体が資本です。昼夜なく酒造りに励む蔵人たちに健康でいてほしいという想いから、西山酒造場では日本古来より健康食として伝わる発酵食を中心としたまかないを提供しています。まかないを食べ、蔵人たちが元気に酒造りできるようになったのはもちろん、「就職し、まかないを食べるようになってから、お肌の調子がいい」と、女性従業員からもうれしい声が上がっています。

 

 (丹波地鶏の木枡せいろ 2,750円(税込))

 

看板メニューは木枡せいろを使ったヘルシーな蒸し料理。使われる野菜などは旬に応じて変化がありますが、できる限り地元のものを使用しています。丹波地鶏は自家製の醤油麹で味付けしており、木枡の中の蒸し野菜は、酒粕を使ったバーニャカウダソースにつけていただくなど、酒蔵ならではの発酵料理でお腹も心も満たされます。鶏肉の下には原木干し椎茸が使われた上品な炊き込みご飯、木枡奥の3品は、酒蔵まかないをベースにした季節野菜と発酵調味料のメニューが並びます。

 

小さな木枡に入っているのは自家製さつまいも麹を使用したミニ発酵プリン。さつまいも麹が自然で優しい甘さを持っているため、砂糖不使用とは思えない深みのある満足感が楽しめます。

 

(赤飯とおこわの木枡せいろ 2,200円(税込))

 

(木枡せいろの白いメレンゲオムライス 2,200円(税込))

 オムライスのトマトソースが絶品

木枡に入った、白くてふわふわしたこちらは、実はオムライス。卵白メレンゲをふんだんに使用し、あっさりしているのに食べごたえのある仕上がりです。器に入ったトマトソースは、麹の甘さでコクが引き出されていいアクセントに。

 

こちらにも、ミニ発酵プリンやまかない小鉢3品がついています。

 

 

(清酒酵母の酒粕米粉ピザ 1,980円(税込))

 

こちらは、小鼓の純米酒粕と日本酒の仕込み水を国産米粉に練り込んで作られた酒粕ピザ。甘酒トマトソースとの相性も抜群なやさしいピザです。

 

 

酒造りのモチーフの一つである木枡はもちろん、小鉢や器、湯呑にもご注目を。女将の目で一つ一つ選んだ、日本六古窯の一つである丹波焼。作風に縛りのない、自由に表現ができる丹波焼は、一点一点デザインや表情が違います。是非食事をしながら器にも触れてください。鼓傅内にて器の購入も可能です。

 

 

先程、デザートのプリンにも触れましたが、白砂糖を使わない、発酵食品の甘さを生かした体に優しいプリンやシュークリームなどのおやつも、鼓傅入り口にあるおやつショップ「発酵お三時 三三 ささ 」にて購入可能。「三三」のおやつは、女将がご自身の子どもたちに作っていた手作りおやつから始まりました。酒造場の切り盛りが忙しく、なかなか子どもたちに手をかけられないなか、せめておやつは体に良いものをと試行錯誤した経験を基に、忙しいお母さんも安心して子どもたちに食べさせることができるおやつが展開されています。

おやつだけをテイクアウト購入することも可能ですので、健康に過ごしてほしい大切な人へのお土産にもぴったりです。

 

 

 

高浜虚子たかはまきょし 小川芋銭おがわうせん 、多くの文人が訪れた軌跡を味わう空間

 

鼓傅の建物は2階建てになっていて、2階にはギャラリー「つづみ 」、会員制酒蔵サロン「 風楽ふうらく 」、そして一日中蔵人になりきって寝泊まりができる、酒蔵宿西山「鼓傅」があります。

 

(ギャラリー「鼓」)

 

西山酒造場・三代目蔵主の西山亮三りょうぞう 氏は俳句に造詣が深く、明治・大正・昭和に渡って活躍した高名な俳人、高浜虚子の一番弟子でもありました。亮三氏は「 泊雲はくうん 」の俳号を名乗り、東京に住む虚子と何度も俳句の添削のやり取りを重ねてきました。

また、先に紹介した銘酒「小鼓」の名付け親もまた高浜虚子です。小鼓の呑み口に強く惹かれた虚子は、俳句雑誌ホトトギスで小鼓を宣伝し、通信販売も開始。このことがきっかけで、西山酒造場は多くの文人が訪れる場所になりました。

 

ホトトギスを通して西山泊雲と親交が深まったうちの一人に、日本画家の小川芋銭がいます。農村風景を愛し、素朴でユーモアのある日本画を数多く残しています。芋銭は当時茨城県に住みながらたびたび丹波市へ訪れ、西山酒造場近くの石像寺にも長らく滞在するなど、丹波市に多くの縁がある芸術家です。

 

虚子や芋銭をはじめ、西山酒造場にはたくさんの芸術作品が残されています。ギャラリー「鼓」では西山酒造場ゆかりの芸術家たちの作品を惜しみなく展示。芸術的・そして歴史的価値の高い作品を間近に見られる希少な場になります。また新人アーティストの発表の場としても提供予定です。ギャラリー「鼓」は、外観蔵見学のオプションにてご案内いたします。

 酒蔵宿西山「鼓傅」室内

 

酒蔵宿西山「鼓傅」は、蔵人が寝泊まりするための会所場(かいしょば)をイメージした空間になっています。かつて西山酒造場を訪れた文人たちの作品に囲まれた、心豊かな時間を一日中楽しめます。

 

 

客室の窓からは、酒蔵の甍越しに雄大な山々が広がります。

 

 

 

(窓から見える風景)

 

宿泊者限定の特別なアクティビティとして、杜氏または蔵人がアテンドするフルコース「ペアリングコース」か、生きた酒蔵の躍動感を直に味わう「蔵内体験」のいずれかを選択可能。日本酒・酒蔵を時間いっぱいに満喫できそうです。

 

食べる・泊まる以外にも、鼓傅では、利き酒講座や、お酒が飲めない人でも楽しめる発酵ワークショップなど多彩なアクティビティを開催予定。

 

(利き酒講座のイメージ。繊細な味わいの違いを楽しんで)

 

 

 

多彩な楽しみ方ができる複合施設・鼓傅には、酒造り、発酵文化、芸術、丹波市の文化や豊かさを知ることができるきっかけがたくさん詰まっています。来た人が、次の世代に発酵文化を伝える一員になれる充実の空間「鼓傅」。文化的な時間を味わいに、是非足をお運びください。

 

 鼓傅

定休日:火曜日

所在地:兵庫県丹波市市島町中竹田1171

「発酵おやつの販売」 発酵お三時 三三 ささ

営業時間 10:00~17:00

「発酵まかないカフェ」 小鼓 こつづみ

営業時間11:00~16:00(L.O. 15:30)

ランチタイム 11:00~14:00(L.O.13:30)

 

ウェブサイト: https://kotsuzumi.co.jp/koden/

Instagram:@kotsuzmi_shop

 

 

私がレポート

稿
ほたる
女性
1980年代
県外から丹波市に移住、素敵な人達との出会いに心躍る日々。食べ歩き、文化体験、アウトドアなど、浅く広く興味があり、「とりあえずやってみる」がモットー。体験してみて感じた等身大の感想をレポートにしてお届け中。
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