自然が生み出す景色の中には、到底人の力では作れない雄大で神秘的なものがあります。今回紹介する金山きんざん(金山城跡)付近の「鬼の架け橋」もその一つ。一度見たら忘れられない奇岩にたどり着くための「金山登山」を今回はレポートします。

 

金山の登山口は、丹波市柏原町側と丹波篠山市側の2カ所にあります。丹波篠山市側の追入神社横からの登山道は、お子様連れでも登りやすい初心者向けの登山道になっています。今回は、金山登山ルートの中でもあまりレポートされていない、丹波市柏原町からのルートをご紹介します。

 

(丹波篠山市側・追入神社横の登山口)

 

今回金山登山に際し、年に何度も金山入りして登山道の整備や山の見守りを行っている「金山のスペシャリスト」、柏原自治協議会の地域コミュニティ活動推進員としても活躍されている山中邦雄やまなかくにおさんに先導していただきました。

 

(山中邦雄さん)

 

丹波市柏原町側から登る「金山城」は登る前から面白い!

 

(鐘ヶ坂トンネル/丹波篠山市側から)

 

柏原町側から登るためには、カーナビの目的地を「鐘ヶ坂公園」に設定してお越しください。京阪神方面からお越しの場合は、舞鶴若狭自動車道丹南篠山口ICを下りて176号線を丹波市街の方へと進み、「鐘ヶ坂トンネル」を超えてすぐを右折したところに「鐘ヶ坂簡易パーキング」があります。ここから先にトイレはないので、この簡易パーキングでトイレを済ませておきましょう。

 

(鐘ヶ坂簡易パーキング)

 

トイレを出て道なりに進み、ヘアピンカーブを曲がって篠山街道へ。そのすぐ近くに「鐘ヶ坂公園」があるのでここに車を駐車してスタートです。

 

さて早速登山口…ではなく、ヘアピンカーブのあたりまで戻って、「不動の滝」へ。鐘ヶ坂公園から近いので、絶好の立ち寄りスポットです。

 

 

不動の滝は柏原川の枝沢に懸かる落差12mの直瀑です。滝が落ちるところにはお不動さんの祠があります。

 

 

 

優美な滝で、氷点下になると勢いを保ったままの姿で凍りついていることもあるのだとか。登山前にピッタリの見どころです。

 

さて今度こそいよいよ…と言いたいところですが、その前に見どころをもう二つ。丹南篠山口ICから登山口に来るまでにあった「鐘ヶ坂トンネル」は平成17年に施工されたもので、地元の人達からは「平成のトンネル」と言われています。現存している鐘ヶ坂トンネルには「昭和のトンネル」「明治のトンネル」があり、どちらも車で通行することは叶いませんが、鐘ヶ坂公園からお散歩感覚で行ける場所にあり、花見・紅葉狩りの穴場スポットとしても親しまれています。

 

 

鐘ヶ坂公園駐車場と不動の滝の間あたりに、「明治のトンネル」へ向かう遊歩道の入口が。この立て看板の先に、明治のトンネルだけでなく、昭和のトンネル、そしてお待ちかねの鬼の架け橋・金山城跡へ向かう登山口もあります。

 

 

平成16年までは現役だった車道を渡っていくと、まず出てくるのは昭和42年に施工された昭和のトンネル。

 

 

このように金網で封鎖されていますが、イベント時には開放されています。昭和のトンネルを左に見て進むと、三叉に分かれた「大曲り」と呼ばれる場所にたどり着きます。

 

 

大曲りにはこの様な立て札があります。

 

 

このように大曲りからは3つのルートがあり、左が明治のトンネル(始点)へと続く道、真ん中が鐘ケ坂峠に続く古道、右が鬼の架け橋に続く登山道です。それでは、登山道に入る前に左へ大きく曲がって、明治のトンネルへと向かいます。

 

 

かつては使われていたという展望台を横目に進み、いざ、明治のトンネルへ。

 

 

明治のトンネルが施工されたのは明治16年。日本で5番目に作られたトンネルで、日本最古のレンガ造りのトンネルでもあります。土木学会推奨土木遺産にも認定されている名所です。総工費は当時の値段で4万円余。その半額は、多紀(現在の丹波篠山市)・氷上(現在の丹波市)両民の寄付によって賄われました。

 

 

隧道の始点は、前々日の雨が滴り落ちていて幻想的な雰囲気。

 

 

こちらのトンネルは通常時は封鎖されています。イベント時には開放され、手前にある行灯が灯されます。

 

 

寄付をした人の名前は、トンネル前の石碑に刻まれています。発起人である氷上郡(現丹波市)の田艇吉でんていきち氏の名前も見て取れます。さて、いよいよ先程の「大曲り」まで戻り、今度は鬼の架け橋へ登山開始です。

 

いざ、鬼の架け橋目指して登山開始!

 

 

大曲りから右のルートを選んで、いざ丹波市柏原町側の登山開始。金山登山には、下のようなトレッキングポールの持参をおすすめします。

 

 

ポールを持っていない取材スタッフには今回、山中さんの財産である「ちょうどいい棒」のご提供がありました。

 

 

また、金山の登山道はよく整備されているので、基本的には迷子にならず進めますが、さらなる安心のためには山中さんの愛用アプリ「YAMAP」の利用をおすすめします。

 

 

オフラインの山道でも現在地がわかり、登山道が検索できます。また、登山記録が簡単に作れて、それをシェアすることで山歩き仲間とつながることができます。金山登山でYAMAPを使うといいことはもう一つあるのですが、それはまた後ほど。

 

さて、先程の登山道をいくと、所々に倒木が出てくるので、乗り越えながら進みます。

 

 

 

この様な沢状態のところも通るので、滑りにくい登山靴を履いて登ります。

 

 

「岩は滑るので、岩のないところに足を置く」という山中さんのアドバイスを受け、怪我なく登ることができました。

 

 

長い登り道なので、こまめな休憩を取りましょう。

 

 

この赤い文字の「金山城登山道」の看板に沿っていけば迷うことなく山頂にたどり着けます。ここは、急坂コースとなだらかコースの分かれ道ですが、「半分の時間で行ける」という山中さんのアドバイスの元、勇気を出して急坂コースにチャレンジです。

 

 

なかなか急斜面ですが、左を見ると苔むした大きな岩がゴロゴロと出てくるのでそれも見どころだったりします。

 

 

平坦なところで一時休憩。この白い看板が出てきたら、頂上まであと一息です。そして頂上間近というときに、登山道を塞ぐ大きな岩が出てきます。

 

 

この岩をめぐり、大山振興会(丹波篠山市側)と、柏原自治協議会(丹波市側)の楽しいやり取りの張り紙も。

 

(大山振興会の張り紙)

 

(柏原自治協議会の張り紙)

 

鬼の架け橋、そして山頂・金山城跡へ

 

ワクワクが高まる中、登り続けると視界が広がり…

 

 

たどり着きました!鬼の架け橋です!!

 

 

本当にこの岩、安定しているの? と聞きたくなるようなバランス感覚。この光景は安藤広重の「六十余州名所図絵」にも描かれ、丹波から京都への道筋として鬼が架けた橋だと言い伝えられています。

 

 

向こう側はちょっと、足がすくむような切り立ちだった高さ。

 

 

架け橋の左側にも、足元に注意は必要ですが、展望スポットが。

 

 

ここから見る景色は、まさに圧巻です。

今度こそ大満足。といいたいところですが、ここは実はまだ山頂ではありません。さて、ここからほど近く、明智光秀が丹波攻略の際に城を構えたとされる金山城跡へと歩を進めます。

 

(金山城の石垣が残る)

 

 

ようやく頂上にたどり着きました! ここの展望も素晴らしく、周囲の山々を観察することができます。まさに築城にうってつけの場所。

 

 

 

写真中程左に、丹波市の城跡スポットとして人気の「黒井城」を望むこともできます。

 

 

このような周囲の山の解説図も設置されていますので、ぜひお目当ての山を見つけてみてください。

 

 

ちなみに登山の序盤で触れた「YAMAPを金山登山で使うときに嬉しいもう一つの理由」がこちら。実はこの図、来たときは劣化してこの状態になっていました。

 

 

この解説図が見にくくなっているというYAMAPでの口コミを受け、山中さんは取材班の登山先導とともにこの図の差し替えを行いに来たのでした。登山客の感想を受け手入れしてくれる人がいる。これもまた、山を通した人と人との繋がりです。

 

下山は鐘ケ坂峠を経由して、丹波市側に降りる人は要注意ポイントも

 

下山は、同じコースではなく、大曲りで3つに分かれていた真ん中の「古道」から出るルートを通ります。鬼の架け橋には戻らず、頂上から逆側のルートを選択。

 

 

頂上あたりで多少雨がぱらついてきたので、早足で下山する山中さんと、下山が怖くてなかなか追いつけない取材スタッフ…という一幕もありましたが、

 

 

ルートの途中には、広々とした馬場跡曲輪もあるなど、見どころいっぱい。

 

 

基本的には下山ルートも迷うことはない…かと思いきや、丹波市柏原方面に戻りたい人にはちょっとしたトラップが。

 

 

 

それがこの看板。昭和トンネル入り口へ…というと、登山道に入る前に見たあの金網に封鎖された昭和トンネルにたどり着くように思いますが、実はこの先にある「昭和トンネル入口」は、丹波篠山市側。金網に塞がれた昭和トンネルを通り抜けることは基本できないので、登り直しになってしまいます。

丹波市柏原側に下山する人向けに、山中さんがテープの張り紙をしているので読んでください。これもまた、SNSでの口コミを見て山中さんが貼りに来た注意書きです。

 

 

ということで、丹波市側に降りたい我々は、この看板とは逆に、しかも「下山中」にも関わらず登路を選択。なぜかというとこの先に、

 

 

江戸時代の鐘ケ坂峠があるからです。そしてここまで来ると、

 

 

下り口を間違うことはもうありません。

 

 

江戸時代の古道は幻想的な雰囲気。

 

 

木立を抜けるとようやく、大曲りにたどり着きます。

 

 

大曲りからは遊歩道を戻り、懐かしの駐車場へ到着!

 

 

丹波市と丹波篠山市の間にある金山。自然の雄大さと奇岩の神秘性、歴史を感じる見どころの数々。半日の登山ですが、印象に残る風景が多く、まさに忘れられない一日となりました。丹波市側からの金山も魅力たっぷり。以前別ルートから登ったことがあるという方も、ぜひ山中さんがおすすめする丹波市側ルートにも挑戦してみてください。

 

また、丹波市の柏原自治協議会では、定期的に「歩こう会」というイベントを行っています。このイベント時は明治・昭和のトンネルも開放。こちらのガイドも山中さんが務めていますので、山中さんと一緒に歩きたい方はぜひ、柏原自治協議会のホームページの「スケジュール」から、イベント情報に注目してみてください。

 

金山城

柏原自治協議会

https://kaibajitikyougikai.jimdofree.com/

金山城 鬼の架け橋

https://www.tambacity-kankou.jp/spot/spot-612/https://www.tambacity-kankou.jp/spot/spot-612/

 

  • 登山口に近い「鐘ヶ坂公園」 GoogleMap

https://goo.gl/maps/3UwDDhwBSWi2ZsCK7

 

  • 登山口最寄りの公衆トイレ 「鐘ヶ坂簡易パーキング」 GoogleMap

https://goo.gl/maps/ACvmyyK7pPsxsk7p6

 

 

私がレポート

稿
あずさ
女性
1980年代
丹波に引っ越して10年超、地元の魅力に興味津々な日々を送るアラフォー。新たな発見と体験が大好き。地元のグルメ、おいしい料理や隠れた名店を見つけることが楽しみで、アクティブな趣味にも挑戦したいと妄想中。
地元のローカルな魅力や美味しい食べ物、多彩な楽しみ方をどんどん発信していきます!
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