丹波市柏原町柏原に、活版印刷の体験・作製相談などができる施設が誕生しました。その名も「廣運舘活版所こううんかんんかっぱんしょ-honmachi-」。かつて柏原城の城下町として栄えたこの地域は「本町」と呼ばれ、それが施設名称の由来になっています。それでは「廣運舘活版所」の方は…? その疑問を紐解くと、明治時代の丹波市の歴史に遡ります。

 

 

古書からみつけた、古くて新しい道

 

廣運舘活版所-honmachi-をオープンしたのは、柏原町の印刷会社「きくもとグラフィックス」の代表を務める菊本裕三きくもとゆうぞうさんです。まちの印刷屋を営むご両親の背中を見て育ち事業継承。柏原町の本町にあったかつての工房から、国道176号線沿いに社屋を移して事業を展開していました。

ご両親が亡くなり、実家を整理していたときに出てきた3冊の古書。明治時代の印刷作品を集めた「花の栞」には、当時の印刷職工が施した活版印刷の技術の結晶がどのページにも刻まれていました。

 


(花の栞の1ページ。兵庫県氷上郡柏原町と廣運舘活版所の文字が)

 

菊本さんの手はあるページで止まります。そこに書かれていたのは、まさしく兵庫県氷上郡(現丹波市)柏原町、実家の近くを示す所在地と、「廣運舘活版所」という印刷所の名前。紐解くと、どうやら菊本さんの曽祖父がこの「廣運舘活版所」に勤めていたのではないかと仮説が立ちました。「これまで自分は印刷屋の三代目と思っていたが、、四代目だった…?」という衝撃とともに、当時の職工たちが作る活版印刷の技術に目を奪われたといいます。

早くて美しい現代の印刷も素晴らしいですが、手仕事の温かみが残り、職工の思いが伝わる印刷もまた感慨深いもの。そう感じた菊本さんは2019年、廃業する活版印刷所などから機械や活字を譲り受け、「廣運舘活版所」として活版印刷事業を復活させました。

 

レトロ&手仕事好きにはたまらない!数々の作品とともに色んな場所へ

 


(ロハスな紙に古道具の活字でデザインを施した装飾活字ミニメッセージカード all Antique -31-10枚入り385円(税込))

 

廣運舘活版所の作品は、丹波市内のクリエイターとのコラボ絵葉書などから始まり、戦国武将の家紋を文化財の和紙に印刷したしおり、譲り受けた古道具の装飾罫線をあしらったシンプル&レトロな作品など多岐にわたります。作品を地元のイベントにて販売したところ、「今だからこそ手書きで想いを伝えたい」と思う文房具好きや紙好きの女性を中心に大好評。SNSでの発信やオンラインショップでの販売をはじめ、全国の手書き好きや万年筆ユーザーが作品を手にするようになりました。現在では、京阪神のイベント出店や百貨店での委託販売、東京のイベントなど活動範囲を広げ、活版印刷の魅力を広げるべく、精力的に活動をしています。

 


(シンプル&レトロな罫紙。便箋やメモパッド等使い方は自由自在。ノートにも使われるフールス紙使用で書き味良好。罫紙マス50枚綴1,485円(税込))

 

イベントではカラフルなオリジナルメッセージカードなどを作れる簡易的なワークショップも開催。参加した方からは「実際に作ってみることで活版印刷のことがよくわかった」という声のほか、「もっと時間をかけてゆっくり作品を作ってみたい」と声を受けるようになりました。また、名刺作成も受注する中で、印刷現場での立会印刷などを行うとより活版印刷の面白みや仕組みが伝わるということも実感。「活版印刷をもっと気軽に感じるスペースが作れないか」、その思いから菊本さんは体験施設「廣運舘活版所-honmachi-」へのオープンへと踏み切りました。かつての工場はご両親の居室として使われていましたが、それを逆リノベーションし、昔ながらの工場の姿へ。印刷機と活字も当時のように並べ、かつての工場を同じ場所に復活させたのです。

 

 

 

廣運舘活版所-honmachi-でワークショップに挑戦!

 

 

現在(2022年10月)、廣運舘活版所-honmachi-は土曜日・日曜日にオープン。遠方のイベントに出店するときなど、クローズしているときもありますが、オープンしているときは立ち寄って工房見学や、簡単なカードのワークショップを行うこともできます。

オリジナルカードのワークショップでは、まずカラフルかつ多種に渡るカードサイズの紙の名からお気に入りのものを選びます。

 

 

選んだ紙を、「手キン」という小型手動活版印刷機にセットして、

 

 

ぎゅっと力と思いを込めて印刷!

 

 

あっという間に、自分で印刷した自分だけのオリジナルカードが出来上がります!

 

 

最初は力加減など迷いながらですが、回数を重ねるごとに慣れていって、

 

 

くっきりはっきり、カラフルなカードを作ることに成功しました!

今回挑戦したのはいちばん簡単なワークショップですが、ここでは、レターヘッドやデザインを選んで、更に便箋下部に自分の名前や好きな言葉を入れるオリジナルレターセットワークショップも開催。この「好きな言葉」は、昔の活版印刷職人のように一つ一つ活字を拾って自分で版を作ります。コツを掴むまでのレクチャーを含め2時間半程度の時間がかかるため、この本格ワークショップは要予約です。

 

 

 

(レターセットワークショップで作れる便箋のイメージ)

 

ワークショップを楽しむ他、奥の物販スペースでイベントでの人気商品をゆっくり手にとることもでき、活版印刷で作りたい作品や名刺についての相談も可能。

 

丹波市と言えば、栗や小豆、黒豆などの味覚が有名ですが、美味しいものを楽しんだあとには、ゆったりとものづくりを楽しむ時間を持つのはいかがでしょうか。簡単なものから本格的なものまで、職人になった気分で過ごせます。レトロな機械と繊細な作品に囲まれて、豊かな時間をぜひ楽しんでみてください。

 

廣運舘活版所-honmachi-

郵便番号:669-3309

所在地:兵庫県丹波市柏原町柏原2934-1

電話: 0795-72-0277

営業日 :土曜日10:00~18:00日曜日10:00~17:00

(イベント出店によりクローズあり、詳しくは下記SNS等で発信しています。)

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オンラインショップ

 

ミニレターセット作製ワークショップ

二つ折りで手のひらサイズになる、小さめの便箋づくりワークショップです。上部のモチーフとお好きな紙を選び、下部には実際の活字を拾って(カナ、アルファベットのみ)好きな言葉を入れられます。自分で活字を拾い、版を組んで印刷できる本格ワークショップ。ぜひお試しください。

 

<内容>基本セット ミニ便箋50枚

<時間>2時間~2時間30分程度

<料金>基本料金:5,000円 増刷 1,000円/20枚

<オプション>二つ折りでぴったり入るミニ封筒 1,000円/3枚

私がレポート

稿
チカコ
女性
40代
関西某所で生まれ育ち、ひょんなことから数年前に丹波に移り住むことに。ライターとしてインタビュー記事や、丹波のランチレポ、ニューオープン情報などを書き綴る仕事をしつつ、夜な夜なしっぽりカウンター飲みを楽しむアラフォー女子です。
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