2021年秋、丹波市生まれのチーズが日本一に輝きました。国産チーズの最も歴史あるコンテスト「ALLJAPANナチュラルチーズコンテスト」にて、最優秀賞となる農林水産大臣賞を受賞したのは、丹波市春日町にある「婦木農場・丹波チーズ工房」のチーズ、「蔵熟成ゴーダ」です。乳牛の飼料づくりから牛の育成、乳搾り、チーズ作りまで一貫して行う、丹波チーズ工房の婦木敬介 ふきけいすけさんにお話を伺いました。

 

(婦木農場 体験施設「○(まる)」外観)

 

婦木農場の長男として生まれ、農家の11代目として活躍中の婦木敬介さん。幼い頃からご両親の働く姿を見て、農業に携われたらと自然に思うようになり、平成27年に帰郷。当初は、野菜の有機栽培に取り組む予定で、牛舎の牛も頭数を減らしつつあるときでした。それでも、「牛について学んでみよう」と静岡県の農場に半年間研修に行き、2頭のジャージー牛を連れて実家へ。それまでホルスタインだけだった牛舎にジャージー牛が入り、濃厚でコクがある牛乳が取れるようになりました。

 

 

この乳質を活かした加工をと考えていた時、両親が晩酌しながらつまんでいたチーズが目に止まります。「このチーズも自分たちで作れるんじゃないか。」もともと発酵食品に興味のあった敬介さんは日本中のチーズを食べ歩き、北海道十勝のチーズ工房に弟子入りしてチーズ作りを学びました。

 

(2022年春に生まれた子牛)

 

北海道で最高のチーズと、素晴らしい師匠に出会えた敬介さん。「いい牛乳から悪いチーズはできる。でも悪い牛乳からいいチーズはできない」、その師匠の教えを胸に、牛を育てるところからチーズを熟成させるところまで手も気も抜かずに取り組んできました。

 

「良い牛を育てるためには一にも二にも観察です。少しでも変わって見えたら見逃さず対処します。」その丁寧な仕事ぶりを続け、ここ数年は牛舎の空気だけで異変に気づくこともできるようになってきたのだとか。丁寧に育てられた牛の乳は、一つ一つ手仕事で、現在提供されている7種類のチーズへと生まれ変わります。

 

 

婦木農場敷地内にあった、収納庫の内部をチーズの熟成蔵に改装。棚にはきれいに形作られたチーズがずらりと並んでいます。

 

 

この棚で熟成されているのが、農林水産大臣賞を受賞した「蔵熟成ゴーダ」。およそ一年の発酵を経て、食卓へと届けられます。熟味が味わい深く、カットしておつまみに、また、削ってパスタやピザ、スープに添えても絶妙なコクを感じます。

 

(チーズ表面の湿気などをとるために、毎日一つ一つ拭くのが日課)

 

蔵熟成ゴーダの受賞について聞くと、「大きな牧場じゃなくても、チーズの有名な産地じゃなくても、良いチーズが作れるとわかって自信になりました」と敬介さん。

受賞のニュースを知った食通の方が遠方よりチーズを目的に農場を訪れることも増え、それを受けて2022年春、チーズ専門の販売所もオープンしました。丹波チーズ工房のショップでは、「丹波スノーホワイト」「蔵熟成ラクレット」「モッツァレラ」「フロマージュブラン」など数々のチーズの他、ジャージー牛乳の自家製ソフトクリームも販売。

 

 

(牧場で育てたジャージー牛の乳を使用、無添加で仕上げたソフトクリームは乳の味が濃厚なのにあっさり)

 

(受賞で話題になった「蔵熟成ゴーダ」など人気商品はすぐに売り切れてしまうので、早めの来店がおすすめ)

 

(左上から、蔵熟成ゴーダ粉チーズ、カチョカヴァロ、モッツァレラチーズ。左下から、スノーホワイト竹炭熟成、丹波スノーホワイト、蔵熟成ラクレット、蔵熟成ラクレット長期熟成)

 

 

 

敬介さんが初めて商品化したチーズが「丹波スノーホワイト」。十勝のチーズ工房直伝のサンマルセラン製法で作られるソフトな触感のチーズです。このチーズの楽しいところは日々冷蔵庫の中で熟成していくこと。はじめはあっさり、日が経つごとにコクが増して内部がとろける食感に。どの熟成具合が一番お好みか、食べる人が日々楽しめるチーズです。コクが更に増して上品な香りが特徴の「スノーホワイト竹炭熟成」も敬介さんのおすすめです。

 

 

 

表面がほんのり赤っぽい「蔵熟成ラクレット」。ラクレットは熱して食べるのが一般的ですが、こちらのラクレットは癖が少ないので生食にも向いています。ワイン片手に、どちらの食べ方も試してみるのも大人ならではの時間。長期熟成のラクレットは、店頭での限定販売です。

 

 

カプレーゼに定番、フレッシュな味が特徴のモッツァレラは、あっさりしたチーズがお好みの人に。少し加熱して、パンに塗るのもおすすめの食べ方です。

 

 

吊り下げて熟成する、形が特徴的な「カチョカヴァロ」。分厚くスライスして、フライパンで焦げ目を付けて食べると、カリッ、もちっとした食感が新しく癖になります。ミルクの味わいが感じられる癖の少ないチーズです。

 

小さな農場で、飼料からチーズまで作り上げられたチーズの数々。日本一に輝いた蔵熟成ゴーダはもちろん、様々な味わいのチーズが揃っています。ご自宅用にも、ちょっと意外な丹波土産としても、ぜひお手にとってみてください。

 

婦木農場 丹波チーズ工房

所在地 兵庫県丹波市春日町野村83

電話0795-74-0820

ホームページ→ https://fukifarm.com/

お問い合わせメール info@fukifarm.com

 

「丹波チーズ工房SHOP」

営業時間:土日祝11時~16時

私がレポート

稿
チカコ
女性
40代
関西某所で生まれ育ち、ひょんなことから数年前に丹波に移り住むことに。ライターとしてインタビュー記事や、丹波のランチレポ、ニューオープン情報などを書き綴る仕事をしつつ、夜な夜なしっぽりカウンター飲みを楽しむアラフォー女子です。
一覧へ戻る

他の記事をチェック!