皆さんはこの看板をご存じですか?恥ずかしながら、筆者は最初見た時、読み方が分かりませんでした。今回、取材させていただいたのは「Krisno」と書いて「クリスノ」と読む、株式会社栗住野工房さんです。

 


こちらでは、筆を製造されているのですが、1階は「画材屋Krisno」という画材店になっています。

 


丹波だからできるアートに特化した筆づくり

 

まずは、代表取締役の西田篤哉さんにお話を伺いました。
西田さんご自身、元々は絵画関連の仕事をされていたそうです。その中で筆は歴史が古く、筆自体の生命力は長いので、ビジネスにしたいと起業。筆は食から美まで様々な用途に幅広く使われていますが、西田さんはその中でも、ご自身の経験から絵画用のものに特化した筆づくりを行うようになりました。製造環境は丹波だからこそ実現可能な部分もあるそうで、納得するものを追求した筆づくりに努められています。

▼西田さん

 
業界のトップアーティストが丹波を訪れる


現在、製造している筆は1,000種類以上にものぼるそうで、有名な文具ブランドの筆もこちらで製造されているそうです。有名ネイリスト等、様々なアート業界のトップアーティスト達が筆を求めてお店を訪れるそうです。そんな、アーティストの方々がKrisnoの筆を使って手がけた作品の一部を見せていただきました。

 


▼ネイルに小さな絵を描く行程。実物は繊細さにただただ感動します


▼店頭に飾られているネイルチップ。柔らかそうなライオンの毛並みが印象的でした


コロナ禍で意外なところからの需要が高まる


コロナ禍で、家で過ごす時間が増えることにより、ネイルの筆は、これまで以上に需要が高まったそうです。さらに、ネイル以外の目的でKrisnoの筆の需要が増えました。それは、プラモデルや模型を手がける分野です。YouTubeでも、単純にプラモデルを組み立てるだけではなく、戦闘でロボットが傷んだ部分を表現したり、戦闘場面を表現するジオラマ造りが流行しているので、そういうアートの世界にもネイルの筆が注目されるようになりました。ネイルの筆がここまで発展することについて、西田さんは予想外なことで驚いたそうです。


▼フィギュアの様な造形物の細やかなペイントにも活用されているそうです

 

 

従業員は全員女性


現在、栗住野工房で働く従業員60名は全員女性だそうです。
丹波市でこんなに多く女性が活躍出来る企業は、なかなか少ないのではないでしょうか。

西田さん曰く、女性の精細さ・丁寧さが、筆造りに適していること、また、工場を清潔に保ち、忍耐強く仕事に取り組む姿勢が素晴らしいのだそうです。さらに、主力商品がネイルの筆なので、筆を作る従業員自身も実際にネイルに使用することで、フィードバックされ、良い製品造りに活かされています。

近年では、日本製の筆が少なくなっている中、機械で作る行程は一切なく、丹波に住む女性が、筆職人となり、全国や世界に届ける筆の会社が丹波市にあったことに驚きました。

▼筆造りの様子を紹介いただきました

 
確実に筆が欲しい人は店舗がおすすめ


西田さんが、1階の画材店をひらく理由は、丹波市民の方々にこういう画材があると知ってほしいという想いからなのだそうです。色鉛筆や絵の具等の、様々な色を見て、何かを感じて創作意欲を発掘してほしいと西田さんは話します。


また、会社直販のネットショップは、供給が追いつかない為、現在は販売を休止中ですが、店頭ではKrisnoの筆を購入することが可能です。実際に、遠方からも買い求めに来る人がいるそうなので、今回、初めてお店を訪れた人におススメの筆を西田さんに選んでいただきました。お買い物の参考にしてみてください。

 


基本的におすすめする筆は、その人が何を描くかの用途によって異なるそうです。そのため、今回は、初めてお店を訪れたネイリストの方を想定しておすすめの筆を選んでいただきました。

一見同じような細さに見えますが、ミリ単位で長さが違うので何を描くかで変わる理由が分かります。
 

 

▼細さ・長さも様々

 

筆の毛先が潰れるのは使い方が悪いサイン


こんなに細い筆だと、筆先が潰れやすいのでは?と質問したところ、筆は扱い方によって長持ちするかどうか決まると教えていただきました。例えば、小学生の頃、絵の具で絵を書くとき、新しい色を作ったり、水を入れて混ぜる際は、筆先で混ぜていた記憶はありませんか?筆者はそうしていました。しかし、その作業は筆先を痛めてしまう原因で、本来は持ち手の先のほうで混ぜるか専用の混ぜ棒で混ぜるのが良いのだとか。そういう日々の使い方でも筆の寿命が変わってくるそうです。また、筆を洗う際、市販のブラシクリーナー洗剤は、商品によっては筆を痛めてしまうものもあるそうなので、注意が必要です。大事なブラシのケアは、こちらの画材店に持ってきていただければ、相談やアドバイスをしていただけるそうですよ。

▼ガチガチに固まったアクリル絵の具も一晩おけば落とせるというKrisnoオリジナル商品


筆で困ったことがあれば「Krisno画材店」へ


コロナ禍で家族で触れ合う時間、共有できる時間が増えたことにより、何か家族でひとつのことを成し遂げよう、やってみようと思った際はアートがおすすめ、そのきっかけに画材店で様々な商品やカラフルな画材を目にし、krisnoの筆も活用してもらえればと西田さんは語ります。

また、長く使いたい筆やお気に入りのメイクブラシ、珍しい素材のボディブラシ等、様々な筆に関して困っていることがあれば、是非店舗へ持ってきてほしいと頼もしいお言葉をいただきました。

 

 

▼ばら売りでお気に入りの色を購入できます

 


 
▼ネイルブラシが人気なのでネイル関連商品も販売しています




大切にしているのは従業員

 
筆者の「大切にしていることは?」という質問に「従業員です」と即答された西田さん。
介護や子育てとの両立にも悩まない環境で、長く楽しく働いてもらえるように工夫されているそうです。
確かに取材中、社内から何度も女性達の明るい声が聞こえ、楽しく働けている環境であることが伝わってきました。

 


楽しく幸せである人から生み出される筆は、いい仕上がりとなって現れるのではないかと思います。そして、その筆を使ったアーティストの作品が世界にも広がり、評価される事により、筆を作る従業員の方々の励みになるという素敵なサイクルが密かに丹波市で起こっている事を、今回の取材で知ることが出来ました。もしかしたら、しあわせのパワースポットかもしれませんね。

丹波を訪れた際は、ぜひお店を訪れて、みなさんの中に眠るアートの心を刺激する逸品を見つけてみてください。


「画材屋Krisno(栗住野工房)」


名称:「画材屋Krisno(栗住野工房)」
所在地:兵庫県丹波市柏原町田路114-3
営業時間 : 午前10:00 ~ 午後7:00
定休日:土・日・祝日
※ 対応可能な日もあり。要電話確認。
HP:http://krisno.net/

私がレポート

稿
MATY
1980年代
自ら取材やレポートを行い、一次情報の記事を大事にしているフリーランスのライター。高校時代から趣味でホームページを開設。発信で世界と繋がる魅力にハマり、以降も趣味が出来るごとにブログを綴る。動物看護士、大手通販会社勤務、全国の百貨店を飛び回る催事販売員を経て2019年独立。趣味は社会人サッカーリーグの魅力を発信すること。ドリカムを崇拝しているアラフォー。
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